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日本映画[監督・俳優]論 という書物について [小説と映画]

 

日本映画[監督・俳優]論 ~黒澤明、神代辰巳、そして多くの名監督・名優たちの素顔~ (ワニブックスPLUS新書)

日本映画[監督・俳優]論 ~黒澤明、神代辰巳、そして多くの名監督・名優たちの素顔~ (ワニブックスPLUS新書)

  • 作者: 萩原 健一
  • 出版社/メーカー: ワニブックス
  • 発売日: 2010/10/08
  • メディア: 新書

萩原健一さんと絓秀実さんの対談形式。ワニブックスの新書。
絓秀実さんの巻末解説が なかなか唸る。
つかこうへいが登場する。中上健次も復活する。
対談中の萩原健一さんが そろそろ映画監督になることを匂わすあたりは
ゾクゾクする。 とくにご母堂の話は是非 実現してほしい。
絓秀実が『過剰なる存在』と萩原健一言い切るのは正しいと思う。
それは読めばわかる。その過剰さは危険なのだ・・・。哀しいけどね。
ロックンローラーとしてのショーケンが後半炸裂する。
ミックジャガーと同じ部屋で酒を飲み ミックとロッドスチュワートの喧嘩を眺めてる
なんてのを読むと この過剰なる才能の持ち主をどう取り扱うべきかは
そりゃ 誰しも たじろぐだろう。
一人で一度に五人分の人生を生きる男と形容しようか?
こりぁ 大変だ。生きるのが苦しいだろうと 胸に迫る。
もっと早く つかこうへいとショーケンが出会っていてほしかった。

 『青春の蹉跌』でショーケンが 手すりを指で撫でながら
「エンヤットット エンヤトット」を意味なく繰り返すシーンがあるが
それが萩原健一のアイデァだとは 初めて観たときから察しはついていたが
改めて 神代辰巳さんの回顧を 語る中で読むと 俄かに
竹中直人の『無能の人』で神代さんが鳥男を演じたシーンが脳裏に浮かぶ。
映画監督としての才能と プロデューサーとしての才能を併せ持ち
同時に俳優としての才能と マネーメイカーとしてのスター、美丈夫まで
引き受ける人生は 如何にも 大変だろう。
女にゃモテるし 男にもいいよられるし 頭は抜群に切れるから世間が見えすぎる。
ゲラゲラ笑わせられてかと思うと 襟を正さねば と思わず背筋を伸ばすような
真剣な語りもある。 矢作俊彦さんとすごくよく似ていると 個人的には想う。
とにかく
軽やかに読めるし ショーケンは マキノ雅弘と同じで滅茶苦茶語りが面白い。
マキノ雅弘の『映画渡世』を読むおつもりで 対談を読まれるとよろしかろう。
黒沢明とカサヴェテスを語り合うあたりも お互いの映画オタクぶりが炸裂。
そして 絓秀実さんの巻末解説で 読者は 別の場所へ連れ去られる。
そこから眺める 萩原健一は 
♪ ドォーは努力のドー!と歌い続ける金剛力士のような存在だろう。
つまり 神話的な勤勉さを人類に示唆する存在として 見えてくるだろう。
中上健次の小説の登場人物が
神話的な振る舞いを してしまう あの 悲しみと栄光が 蘇ったりする。

 ♪ジャズを聴けジャズを ジャズを聴けジャズを
と口ずさみながら バッハのブランデンブルグを聴いて小説を書いていた
中上健次が のっそりと立ち、 萩原健一の傍で笑っている。
読み終えた瞬間そういうイメージを私は垣間見た。
私にとって 予想外にも そういう書物になるだろう。
そして同時に こう思った。
私も萩原健一さんを見習って 観音経と般若心経を毎日読誦する精進を
せめて怠らることなく続けようと。
そうそう ショーケンも『三船敏郎さんの再評価』を熱く語っていた。
続篇があるとしたら 是非 溝口健二評を語ってほしい。
黒沢明にちと偏っていたけど まぁ それはプロデューサー萩原健一の才能。
商売しなきゃ♪と精進努力するのは観音様への深い帰依ゆえなるかな?
ということで、
前略 萩原健一様 
今年の、浅草寺の小冊子9月号と10月号をお読みください。
東大の斉藤明先生の観音菩薩解説は 秀逸ですよ
と 届く当てのない ファンレターを記しておきます。


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showken-fun

以前にエイシュンさんが示されていた、ショーケンがショーケンの父を演じるというプラン、忘れておりませんですよ。

でも、もうとにかくいろいろと企画が動いているようで。
ひとつでもふたつでも実現してくれることをのみ祈っております。

リンクさせてください。よろしくお願いします。
by showken-fun (2010-10-21 02:14) 

エイシュン

showken-fun様
そちらさまのブログのおかげで 読むことができました、
神保町の三省堂でのサイン会? 伺えてたらなぁと 思います。

ショーケンが父を演じ その子供たちの様々な年代記を
眺望するような物語とか ありましたね。
ご母堂の強い信念を大切にし
ご母堂への 命がけで産んで
命がけで育ててくれたということに対する
ショーケンの感謝や畏敬の念が彼のエネルギー源なんですね
それが 観音信仰にも繋がってらっしゃるんでしょうけど。

 竹中直人さんとのラジオ番組でも かなり 映画監督業への進出を
匂わせてましたね。 小栗旬だって監督するんですから
是非!という感じですよね(笑)
ロックンローラーとしての活躍も期待してしまうけれど
優先順位をつけて じっくり とにかく
映画監督&プロデューサーとして次々と 
作品を形にしていただきたいものです。
ありがとうございました
by エイシュン (2010-10-21 09:48) 

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