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続いて神聖なる森 [栗庵]

午前9時には宇治橋を渡り
大山祇神社と子安神社を
参拝しました。
五十鈴川を抱く木々、目に沁み入る碧の風。
白砂利の真っ直ぐな参道を包み込むように神聖な森が
なだらかな稜線を描いて人々を迎える。
するともう陽は高いのに 二羽の鶏が連なり歩きながら
一方が鬨の声を上げると 少し間を空けて片方が啼く。
その繰り返しを微笑ましく眺めて手水舎で浄め
五十鈴川のほとりで 深呼吸をする。
瀧祭神を参拝し橋を渡り風日祈宮へ。
この宮に架かる橋も木の香も高く清々しい。
高い木々は 表情豊かである。風に鳴る枝葉の囁きは
陽光と戯れておしゃべりだ。心軽やかになるけれど
やはり ご正宮に近づけば自ずと緊張感が内から
湧き出てくる。
この神聖な森の里には目に見えない耳には聞こえない
造化の妙なる流れが神という呼び名で実在しているからだろう。

内宮さんでも御垣内参拝をさせて戴きました。
こちらでの御神楽奉納は後日。一度に両宮は
今の私には 余りにも身の程知らず。度を越してしまう。

荒祭宮へ参拝して ちょうど一時間が経過していました。
ゆっくりと参道を返し 今一度風の歌 木々の囁きを
聴覚だけでなく視覚触覚を動員して 伺いながら
穏やかな陽光に洗われていく心地よさを満喫する。

予定より早くおはらい町に出てしまう。
五十鈴川カフェで燕や翡翠が水面を滑走するように飛び交うのを
飽かず眺めて詩でも詠もうとするけれど 次に伺う伊雑宮への
電車の時間が気になる。帰りの新幹線も近鉄特急も予約をずらすことを
避けたいので 一時間に2本しかない近鉄の普通電車を五十鈴川駅で乗る為に
バスの時間も気にしながら昼飯を喫すべしと 気ぜわしくなる。
ようやくおはらい町の食べ物屋さんも営業開始だ。
そぞろ歩き川べりのとうふ屋でと思ったがその隣の宝彩という
お店でカキフライを注文する。的矢の牡蠣が大きい!
しかも築地のかつ銀みたように二個抱合せじゃないか!
牡蠣の味噌汁 牡蠣のしぐれ煮 どれも美味い。
しかも「的矢の牡蠣はシーズンもう終わりなので」と
焼き牡蠣2個をオマケで頂戴する。口福!
お腹いっぱいで もう赤福の入る余地は無い。
バスで五十鈴川駅に向かい 途中 月讀宮へ寄るべきかと思ったが
今回はともかく 伊雑宮を優先させた。
上之郷駅は無人駅。小さな駅が近鉄線には多い。進行方向
一両目に乗らないと乗降できないので注意が必要。
田圃ばかりが一面に広がり山二つ越えてやってきた小さな村。
此処に神宮の別宮が在るのかと 訝りたくなるほど
人家もまばらだ。ちゃんと駅前に伊雑宮への案内看板がある。
旅館を右手に観て 斜め前にお宮の鳥居が直ぐ見える。
駅から歩いて4分もかからない。
朱い鳥居ではない。木なり地なりの大きく背の高い鳥居で
倭姫宮における気配が 私には感じられた。
参拝者以外は 人の気が見あたらず 
林が訪れる者を参道に招くような 静かなお社だ。
ホーホケキョと林を飛び交う鶯が鳴き合う。
太くて良く通るいい声だ。参拝者に語りかけてくるような
妙に人懐っこい調子で こちらの口元がほころんでしまう。
ホーホケキョと啼くが その音階が微妙に疑問符付きになったり
笑うように高らかに短く連続したりする。あちらは恋の季節で
こちとら人間など全く対象ではないのはよく判っていても
自然の一部である自分を取り戻せる場所だからこそ
反応は 致し方ない。いやそれを止める方がこの場に相応しくないのだ。

この神聖なる森の里には 外宮にしろ内宮にしろ
伊雑宮にしろ 精霊や神々が偏在を示し得る
何かが仕組まれている。精緻微妙な造化の妙が人々と
共に在ることができる重力組成が 既に存在しているのだろう。

世界中が この神聖なる森の この重力組成になれば 
人類はこの星で
命を繋ぎ続けることができる。

さぁ これからもっと気楽に此処へ帰ることができるようになろう。
世界中の人が いや就中 日本中の人々が ご利益なんぞを求めるのでなく
生かされている在り難さ奇蹟に 畏怖の念と歓びを
心に呼び覚ますために。 つまり命の洗濯をするために!

思い上がるべからず 思い遣り深くこそ あるべし。
大和魂が そういう大いに和する魂の発露であることをしっかり認識する
人類の こころのふるさと であり続けられますように。
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神聖なる森 [栗庵]

大型連休直前の平日ゆえに
おかげ年の伊勢参りも比較的 人出は穏やかであった。
真新しい木の香も高き新宮を拝する心持ちは
いやがうえにも神妙に自ずと定まる。
あぁ 日本人でよかった。

初日は 伊勢到着早々に 外宮参拝に赴いた。
そして生まれて初めておかげ年に伺い
御神楽奉納を一族を代表してさせて頂いた。
我が身に不相応は承知であったが 
今生この機会を逃すわけには いかない。

正午過ぎの神楽殿は 私一人だけ。
ご神官に導かれて 神楽殿に上る。
正座して榊によるお祓いを受けて 待つ。
緊張の余りお祓い(お浄め)の際に
横棒一本に二足の木製仕切り用衝立に
私は額を思いきり打ち付けていた。
痛みなどなかったが その衝立の棒を
へし折ってしまったのでないかと気が気でなかった。
雅楽師の方々と巫女さんがお出ましになるまで
私はそっと眼前の衝立の横棒を撫でて無事を確認し
ホッとした。

 篳篥、笙、鉦、龍笛、太鼓、倭琴 
御神楽の雅楽演奏師方々は
まるで絵巻物で観た事が在るような古式ゆかしき色鮮やかないでたち。
白装束に赤袴の巫女さんは 恭しく供物を目高に捧げ
おごそかな雅楽の音は 低くうねり高く跳躍を試みる。
天と地の間における気の流れを描写する。龍体であり流体。
神聖なる森に流れる造化の妙なる流れを 人が奏じて
今ひととき此処に在らしめよう・・・そういう祈りと願いが
雅楽というノートには込められているのではあるまいか。

やがて私から向かって右手の御簾を開けて ご神職が
腰を少し落として重心をしっかりと太陽神経叢いわゆる
臍下丹田に決められてすり足で風の音を共連れて現れる。
神在られる方角に設えし聖なるめどうに向かわれ
座して祝詞をとなえ奉りくださる。禰宜奉り賜る。
言祝ぐ 寿ぐ。
やや高めの声音は お出ましの際に受けた印象の男らしさと
違う。女性的とまで言わないが 男声の高音部担当ぐらい。
その言祝ぐ 一言ひとことに 子音と母音が必ずワンセットになる
日本語の美しい響きに 私の聴覚はすっかり奪われていた。
雅楽による前奏は、あの低くうねりて跳躍をする繰り返しは
この為に予め構成されていたのだろう。

 豊受大神様に 私も座して礼を示し手を打って拝謝し奉る。

神楽殿を出て御正宮に向かい 御垣内にて参拝させて戴く。
新しい神殿の屋根。華美に誇らず質素でありながらも
叶う限りに丹精込めた意匠は
「人が出過ぎたマネをせず 大自然に寄り添いお手伝いをすればよい
自然そのものの美しさに人の意と手を施すのを慎み相対する」
というコンセプトを力強く、見事に変わることなく示している。
『我は 在る である』 その静かな声を表わす意匠であろう。
我が国の本来の魂は こういう心の持ちよう とお示しでもあろう。
茶道も和食も この魂から発生しているのは当然のことなのだ。

屋根に唯一の色が飾る。黄金だ。黄金色の金具が緑陰を背景にして
陽光を受け撥ねて煌めく金色の粒子を拝する者に披露してくださる。
ホサナー! そう呟く人もいるかもしれない。

多賀宮の石段を上がり 濃い緑の懐に抱かれ頭上の太陽を
遠く高く感じる。大きな眼差しを前に 神楽殿での御榊の祓いの際に
私がしでかした不調法の詫びごとをつい申し上げてしまう。
石段をくだり 前方で少し人だかりしている亀石に向かおうとしたら
背後から こっちだよ と低い声に呼び止められ振り返る。
あぁそうだ あの奥にある小さなお社が 水神様だ。
そちらに向かうと小さなせせらぎに沿って歩くほど こっちだよの
声の主が 蛙だと明確になる。その姿を認めようとするが
なかなか見つからない。 
土宮 風宮を参拝し 参道を戻り 目が愛らしい白い神馬を暫し眺め
俗界に出る。外宮前にもできた赤福でお茶と餡子餅で一服。
倭姫宮に参拝し 初日を終え 宿泊先に向かった。

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Rimbaud is My rainbow・・・ [栗庵]

イルミナティの事をこのブログで書いていたからか
ある日 シャワーを頭から浴びていると
私の脳裏に閃光が走り抜けた。
『アルチュール・ランボーのIlluminationイリュミナシオンって
 イルミナティ(光を与える者)だっけか?!』
如何せん子供の頃から金利生活者になるんだと
決意していた天才詩人だったので 気がかりになった。

 森繁久弥氏がテレビで中也の『湖上』ポッカリ月が出ましたら
船を浮かべて出かけましょう・・・あれを暗誦されたのを観て
中学生で中也に衝撃を受ければ 当然の如く
誰しもそのままアルチュール・ランボーという彼岸に
波の背に乗り漂着は必至である。

金子光晴訳と堀口大学訳を左右に置いて真ん中に
ノオトブックを開いて フランス語なんぞ一口も喋れない
14歳のガキが 自分流に翻訳し直す、ぐらいの事も
どなた様にもお心当たりございましょうや。
長谷川伸流の『小説家になるための、小説家であり続けるために
すべき読書法』とも相通じるところがある事を
なぁんだ とっくにオイラしていたんだと 思い出す。
しかし そんな熱狂も 件の天才詩人が27歳だかで
彼の母親か妹宛に書いた手紙を読んで大いにゲンナリしてしまう。
「これから僕はひと稼ぎしたら その金利で生活しますよ
 そして兎に角健康な娘に男の子を一人産んで貰って
 その子を 僕が完璧な人間に育て上げます」
といった星一徹のような自分の叶わぬ夢を倅にお仕着せするような
文面を読んだ途端に ヴォワイアン(見者)の手紙は
どうなっちまったんだよ と興ざめ、法華経の如来寿量品偈頌の
『仏語実不虚』という詩句を叩きこまれていたので
フランス語だけは習得しなくてはならないという志も萎えたのだった。

しかも 同じ1854年に生まれたもう一人の見者・シュタイナーに
私はのめり込むことになる。なぜなら天才詩人ランボーは同時に
予知能力というSPECを保持した見者でも在ったのだが
途中でそんな事は抛りだし、ノストラダムスの後釜に座る義務だか宿命を
回避してしまう。彼が回避しなければおそらく オーストリアの
裕福でリベラルな家庭に育ったルドルフ・シュタイナーは
ゲーテの植物研究に関して生物学者として監修しただけで終わっただろうに。

そして宇佐美 斉・京大教授のランボー全詩集がちくま文庫にあったので
改めて Illuminationイリュミナシオンを読み返し 
あぁ やっぱり ランボーは 光りを愛する者派だったと
安堵した。そして 堀口大学先生は かなり飄々とランボーが
預言者才能を保持していたなんて事を 書かれているのを
発見して この人の刷り込みだったんかいなと 金子光晴先生訳と
ごちゃまぜに読んだツケが変な所で回ってきたもんだと
自分を嗤ってしまった。

 宇佐美教授訳のこの文庫版のランボー詩集には
ランボーの福音書に関する文章も収録されている。
なぜか共観福音書でなく、ヨハネの福音書のみを
16歳の少年が解題を試みているのだが
それはまるで ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』に出てくる
一大叙事詩【大審問官】に迫る勢いの散文詩になっていた。
アウフーベンしまくりの散文詩!
更に12歳ぐらいで書いたギリシャ語とラテン語を呪詛する
少年の告白を書いたコントも 私は初めて読んだが
今時の日本の小説家で此処まで活き活きと
クラスメイトの大方の心情を代弁してみせる文体を
サラリと書ける人がいるんだろうか と思うぐらい
ガキンチョの悪戯書きとは思えない程 巧みだ。
そして 既に金利生活者になるんだと書いているから
パリコミューン前夜のフランスでは こんなガキどもが
口癖のように金利生活者になるんだと 云っていたんだろう。
この早熟なる天才ぶりは ラディゲより上を行っていると
私は 思った。『肉体の悪魔』なんて少女漫画みたいじゃん。
いや筆が滑った! 私の此処でいう少女漫画とは
私がガキの頃 姉が買ってきた『りぼん』とか『少女フレンド』に
掲載されていた頃の少女漫画の事を指している事を
ご了承頂きたい。

 私が8㎜映画でランボーの『永遠』 
とうとう見つかったぜ 何がさ 永遠 海と蕩けちまった
太陽の事さを使ったのは 未だ観ていなかった
ゴダールの『気狂ピエロ』からの剽窃であり
その映画に『物語~レシ』と題し、同じく未だ観ていなかった
ゴダールの『女は女である』の自転車シーンを剽窃してしまったのは
私が ある種の天才だったからそうしてしまっただけのことだが
今となっては そんな事はどうでもよいことになっちまっている。

そして。
Illuminationイリュミナシオンの冒頭を飾る【大洪水のあと】が
私の脳内の無意識領域辺りに沈殿していて
私は このブログに
アセンション後のこの地上時空を夢に見てまで書いたのだろう。
なぁんだそんな事だったのか とホッとしかけたのだが
しかしなぁ アルチュール・ランボーはこの時までは
ノストラダムスの後を継ぐ自覚があったんだっけ?
全開だよね・・・・霊眼。という危惧と

何で今更、ランボーなんだってのが どうしても気になるわけで。
【大洪水のあと】は ノアの方舟の時代を描写していないことは
確かなんですよね。それ以外の詩は言葉の錬金術師が
サゼスションをふんだんに潜ませているいるらしいのですが
そんな解析をこの天才詩人の作品に対して誰もしやしない!
ひょっとしたら 70歳まで生き延びたシュタイナーは
何やら読み取っていたかもしれませんがね。

※ちょっとボルヘスの真似をしてみました。すいません♪


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春cabbage [栗庵]

春は子供の頃から苦手だ。
花粉症なんて病名が無かった時代の私の少年期にあって
全く憂き世と霞む花の仕業で瞼が膿み腫れたり
寝起きに冷たい水が鼻腔の奥から目を抜けて
頭痛を起こして不快が続くからだ。
咳もクシャミもひっきりなしで 春を愉しむ余裕なぞ無かった。
いやはや全くわが世の春とは縁遠い。

しかし今年は少し具合がよろしい。
春一番が吹かないのは2000年以来らしいが
杉林も こう地殻変動を今にも起こしそうな気配が
張りつめる大地で 今更種の保存など如何ほどの
意義があるか躊躇っているのかもしれない。

ところで。
以前『ゴダールが映画を撮るように小説を書く』などと
大言壮語したのだが グレイスキンを書き上げると
そのようにして小説を書けるかどうか判らないけれど
またぞろ アドリブ小説を書きたくなっている。
いやそれより『安眠屋』だとも思うのだが
如何せんそれなりに構成を固め少し長めに物語る予定となると
エンジンの回転数が安定するまで ちょっと吹かしてみたくなる。

以前は『ネギ焼屋のバイロン』という短篇を
大阪の江坂に実在するネギ焼屋を舞台にして書こうとしていたが
大阪弁で台詞を書くのも面倒なので
いっそのこと 東京で最も大阪っぽい街である蒲田を
舞台に変えて 出奔した大阪人がやっていたネギ焼き屋に設定し
蒲田だと長老派教会の牧師が物語に登場しても地理的に無理もなかろうし
松竹蒲田撮影所の跡地辺りをロケハン?するのも容易い。
などと思い定めるような今日この頃。

と 唐突ですが 下手(ゲシュ)なる発句を 以下、羅列します。

新橋界隈の飲み屋さんで句会を統べる、我が早大シネ研時代の同輩
雅宗匠?殿よ このブログを未だ読んでいてくださるのなら
コメント欄で こき下ろしてちょんまげアルザンス♪

一、 春カベツ 凍土を分けて 甘味かな

二、 春カベツ 寒さに耐えた 甘さかな

三、 旬カベツ 噛めば噛むほど 冬よ去れ

四、 沈丁花 その香かぐわし はな抜けん

※ ちなみに 漱石先生は 英国帰りだったが
  cabbageをキャベジとか表記しなかった。
  「カベツ」と日記にも書いている。


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栗庵流人・新帳~その100 [栗庵]

さて。栗庵流人・新帳も100日めです。
では 書きます。
ピーター・ドラッカー曰く
と大上段に構えて ガックリさせるのが 「オチ」?
「マーケティングとは 生活者の満足を創造することである。
 生活者の側から満足を考えることである」
ということで
私は電子辞書を発売当初に買って重宝しているのだが
最新のも 更にコンテンツは深化してはいる。
だが 相変わらず『重い』。これだとiPadの方に分がある。
そこで 以下のようなiPod(音楽再生機の方!)をカンニングしつつ
名刺又は タスポやイコカより少し大きめでポケットに入るサイズで
厚みは5ミリを目標に!
但し『英和辞書』など外国語・辞書限定です。
(コンテンツの深化は追究すればするほど著作権料を含め単価を高くしますから)

minidictionary.jpg

●付属のペンでスペルを一文字づつ入力(入力専門の窓で!)
●液晶窓で表示も大きくできる機能は欲しいですねぇ
●できれば 付属のペンのおしりには活字
 10p~14p程度を印刷物からならなぞって入力できる機能
●USBで電気は蓄電・・・これがあればパソコンに繋いで「辞書ソフト」は
 ダウンロードで購入ということになるかな?
●国語辞書や和英辞書だとローマ字入力で変換機能が内部ソフトにないと駄目かな?

などと 思いつきを描いてみました。
これがあると 英語の文書を気軽に読めるなぁ
という 生活者の満足を創造してくださる企業はないでしょうかねぇ~

☆あんまりアップル系だと 訴訟問題がキツイかもしれないので注意でしょうが。
☆『ご連絡は このブログのエイシュンプロフィールのメルアドから』
 と とりあえずは 書いておっこうっとぉ~♪


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栗庵流人・新帳~その99 [栗庵]

昨日でとりあえず書き終えた短篇ですが
高校時代栗庵流人名で まぁ日々雑感やクラスメイトの失態やらを
回覧ノオトにスケッチするように書き連ね やがてそれらを纏めて短編小説化して
書き纏めるなどという事をやっておりました。
それを40年近く経って繰り返してみたわけです。
それゆえ「新帳」というサブタイトルを付けた次第。

異星人の話を書いている最中に
女優の淡島千景さんが亡くなられました。
慎んでご冥福をお祈りいたします。 合掌。

淡島千景さんといえば 私は
まず 小津監督の『麦秋』と『早春』を思い出します。
『麦秋』では 料亭の跡継ぎ娘で 原節子演じる「紀子」の
女学校時代からの親友という役でした。
戦後の焼け跡から奇蹟の復興をしていている最中の我が国の姿を
背景に 北鎌倉や新橋を舞台に 淡々と物語は進み
原節子の「紀子」は 近所に棲む次兄の親友で病気で妻を亡くした
小さな娘もいる男と結婚をするまでを描いております。
淡島さんが「紀子」に 言う
「私は あんたなんか 芝生の御庭があってキッチンには
 冷蔵庫なんかあって あたしが訪ねると あんたが
 ハローとかいっちゃって ショートケーキいかが なんて
 そんな結婚すると思ってたわ」
とかいうシーンが大好きでした。この映画におけるショートケーキと
あんぱんが引き起こす人生の機微というのが 流石小津安二郎なのですが
まぁ それは蓮實重彦先生の『監督小津安二郎』でどうぞお読みください。
これぞシナリオ解析と申すべき 見事な分析です。

そして『早春』では 池辺良の妻役で淡島さんはご出演されています。
正直 私は淡島さんの方が 岸恵子さんより美人だと思うタイプなので
どうも この火遊びぶりが しっくりこず 淡島さんの美しさに
ただ見惚れている映画でした。
役柄としては 嫉妬でキリキリしているはずなんですが 
シナリオと演出がそうだったのか 淡島さんが演じるとそうなってしまったのか
寧ろ狼狽えるのは 若い岸恵子さん演じる「きんぎょ」の印象が強い。

「東興園のシュウマイライス」なんていうシーンもありましたねぇ。
「我が身を抓って 人の痛みを知る、つまりセルフエグザミネーション」
という 変な英語がでてきたり。
self examination・・・そんな英語は ございませんでした。念のため。

花粉の季節が参りました。さぁ 目はショボショボするし
明日は ショートケーキかあんぱんを喰うかなぁ
などと めっきり今日は抜け殻状態でございます。


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栗庵流人・新帳~その98 [栗庵]

大和アンターラスの総理大臣が
思い起こしていたネカッティ大統領の就任演説の
一節は こういうものだった。
『 我が家系は先祖代々ペトロニアンですが
  私が最も愛している福音書は
  ヨハネの福音書です。なぜなら
  その福音書にしか 新しい契約は記されていないからです。
  イエス・キリスト曰く 
 「互いに愛し合いなさい」そうです。たったその一言です。
 私は思う。このバクリカ連邦の国民が この新しい契約を
 心から愛し そして「自分だけが仕合わせなんてありえない」
 という思いを互いに共有し合い 共に切磋琢磨し
 自由(リバティ)を 決して自己中心主義とはき違えなず
 この地上に 私たちの国から 本当の豊かさを享受する日に向けて
 努力するという事業に 全ての人に参加して頂きたいのです。
 国家が何をしてくれるかではなく この国の本当の豊かさと
 自由の歓びを分かち合う為に 国民一人ひとりが
 自分に何ができるかを考え 其々が其々の最善を尽してほしいのです。
 そして 我々政府が 何をすれば みなさんと同じ理想を達成できるかを考え、
 命を懸けて働くことを 此処に誓います』
未だ40歳そこそこの若々しい政治家は 怖い物知らずだった。
たとえば この演説を 彼の横で聴いていたピーターソン副大統領と
会場の貴賓席で聴いていた新大統領の父親は 同時に同じことを
呟き 危うく舌打ちが周囲に聞こえそうなほどだった。
「なんてこった!こいつめ天使にかぶれやがって!」
実際は 天使でなく それは エンゲルスだった。
カール・マルクスを支援し続けた 工場経営者の倅・エンゲルスの事だ。
流石に父親は殺意を抱かなかったが 弟のロベルトに次期大統領にする決意をさせ
ピーターソンは 自分がやはり大統領になるべきだという思いを募らせていた。

ウッチャリ田野倉総理は そんな都市伝説のような事実も知ってはいたが
やはり ジョン・カート・ネカッティをアイドルのように愛していたので
彼は この常軌を逸した異星人との会議に参加できたことに心地よく酔っていた。
オ・ピュロン現大統領とて 似たような気分であった。
グレイ・スキンは 銀色の球状のフリーエネルギー装置の量産体制を
説明するテクニカルメソッドを その地球で使用しているありふれた記録媒体に収めた物を
オ・ピュロンと田野倉に手渡し 今や爆睡状態のシープマンには 後日
自分が彼の後釜に座る新首相に手渡そうと 異星人は 言った。
そして グレイ・スキンは ネカッティ大統領が持ち込み 田野倉がうたた寝をした
古びた椅子を 懐かしそうに眺めて 
「ロザリン・ローズは 当時の彼女の夫、アクセル・ナインを共産主義者弾劾運動のブラックリストから外すことを ネカッティに懇願したんや」そう出し抜けに云い その椅子に座り
「ロザリンはミンクのハーフコートの下には 何も身に着けずに こんな風に座りはって
 ハーフコートのボタンを外し まぁ 生まれたまんまの姿を大統領にお見せしたんや。
 そして・・・」その後を打ち消すように オ・ピュロン大統領が 立ち上がり 制した。
しかし 灰色の肌をした異星人は オ・ピュロンを宥め 田野倉にも念を押し
「巷間では その後 ネカッティのハッスルぶりが定説となっているんやろ?
 そう 彼はロザリンの胸の谷間に 思わず突進し そして自分の上着を脱いで
 ロザリンの丸見えの叢をを覆い隠し ただ泣きじゃくっただけやねん フフフ」
可哀想な大統領は 幼い頃に謎の死をとげた母親に再会していたのさと異星人は付け加えた。
それゆえにあの撮影所の小道具にすぎなかった椅子をわざわざ大統領執務室まで
取り寄せたのだった。そういうものだ。

 二人の国家首脳は グレイ・スキンが又 紙飛行機になって窓から去るのを見届け
大統領はテレビ演説を用意するために補佐官たちを呼び
総理大臣は ようやく 気絶から息を吹き返した外務省と内閣府のエリート官僚たちに
事の次第を 銀色の球や記録媒体を手に説明していた。
メイメイランドの首相補佐官にも田野倉総理が英語で説明をした。
気絶し面目を無くしていたエリート官僚たちは 総理の英語力に関心しつつ
帰国後、自分たち官僚はこの男には頭が上がらなくなるんじゃないかと危惧していた。
メイメイランドの補佐官はなぜ自国の首相シープマンが 一人ラリッているのかを
誰に訊くべきか迷っていると
バクリカ連邦の役人たちがその説明を省くためにサッサと救急隊員に白髪の首相を委ねてしまった。

「詳しくはこれから我が国の大統領によるテレビ演説をご覧になればお分かりになります」


異星人の紙飛行機が窓からすり抜けて行くのを見届けたネズミ色をした猫は
大きな欠伸をし 前足を伸ばし背から尾に向けて筋肉や骨を存分に屈託を解き放つと
のろのろと 行く手を定めて悠然と歩み始めた。しかしその猫が
まるで 煙のように消えてしまったのは 誰も見ていなかった。

~ おしまい。The End

☆尚 以上の物語は あくまで 地球と酷似した惑星でのフィクションであり
 つまりパラレル・ワールドの地球と形容すべき星での虚構思って戴きたい。
 なにぶん 酷似しているけれど 細部はいろいろ似て非なる・・・なのです☆

もしも長々御付き合いくださった方々いらっしゃいましたら
どうもありがとうございました。栗庵流人は 明日から通常のノンベンダラリの雑感に戻るでしょう。
そして100日行として今週で毎日(今週の月曜は休みましたけど)書くのは
どうするべきかを判断しておりませんが おそらく栗庵は100までと致す所存です。


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栗庵流人・新帳~その97 [栗庵]

グレイ・スキンはかく語りき
「火星にはまるで古代ローマ帝国の石畳や
 ギリシャのパルテノンと見まがうストアの瓦礫が
 転がっているのを NASAの探査機が撮影しとる。
 それでも シープマンはんのお仲間らは
 人類火星移住計画なんちゅうアホらしいことを
 企てとる。意味ないでぇ。火星は地球の過去でもあり
 成れの果て、あぁなるでぇの見本でもあるんや。
 なつかしぃんやろ イルミナティ同盟の諸氏に
 乗り移っとる 元・火星の住人らは。
 ゲーテがメフィストフェレスとして世に開かした
 ルツィファーを ニク・ジャガアが『悪魔に同情する歌』で
 再登場させとる。そしてその歌詞の中で
 「ネカッティを殺したんは誰やって?
  そら あんたら人間とわてやがな 悪魔の親玉の!」とな。
 問題は そこや。
 たとえイルミナティの面子を詳らかにし
 それらを特殊部隊が殲滅したところで ナザレのイエスが
 再臨し 一人残らず 己自身に復讐する宿命に従がわせたとて
 乗り移ったモンらは 魂っちゅう乗り物を求めて
 再び 何処からやってくんねん。あいつらには わしらが紙飛行機やら
 空飛ぶ円盤でやってくるなんちゅう親切心はないんや。
 同時に黄金を太陽の活動維持に使う志もなく
 黄金を自己中心と支配欲の媚薬、催淫剤に仕立てる
 目に見えない悪魔の親玉たちは 人の肉になど興味なく
 奴らは 人々の良心すなわち魂を喰らいにくるんや。
 人間は 自分の思い通りになる魔力を得られるのなら
 1円の得にもならん いやその良心のお蔭で拷問にかけられたり
 邪魔者扱いされる原因にもなる「良心=魂」など
 目に見ない悪魔の親玉どもに あっさり喰らわせるんや。
 
 なんで悪魔はそないに良心=魂ゆう乗り物を欲しがるんやろ?
 答え。良心=魂ゆう乗り物は どんな星へもどんな次元にも行ける。
 せやけど それを失ったあやつらは ただこの地球を彷徨うしか無い。
 その乗り物を掠め取りたい一心で 永遠とは無縁の
 3次元存在時限定なる富や悦楽を餌にしてくるんや。
 人類は この星で 魂ゆう乗り物をオーバーホールしたり、修理するために
 来てるゆう目的をそろそろ共通意識にした方がええんや。
 贅沢、快楽 そら魅惑的やがな。せやけどほどほどにせんとな。
 それと ちょっとゆうときたいんは
 プロメテウスとルツィファーを混同しては あかんで。
 
 火星でやり損った行き詰る文明の残滓なんぞを
 万能の神の火と偽る始末や。そんなマガイモンを掴まされた
 ファウスト博士は ホムンクルスゆう出来損ないの我が子を
 目の当たりにして 我に還えるわけや。ちっ!メフィストフェレス奴
 なんやあいつ!マガイモンやんか・・・・
 イルミナティと対峙する同盟に属したゲーテは そう書き残したわけや。
 どうや 原子力ゆうんは ホムンクルスと同じやないか?せやけど・・・
 あの破壊力は この星に突撃してくる隕石やらを打ち落とす役目を
 果たすかもしれへんけどな 」

灰色の肌をした異星人の長広舌を聴きながら オ・ピュロン大統領は
こう思った。
・・・ネカッティはこのお喋りな灰色の異星人をプロメテウスと信じたのだろうか?
・・・セールスマン大統領は ルツィファーに憑依されていたということか?
そして そっと田野倉総理の顔を見た。
元クークラクー団の団員だったセールスマン大統領と自分が同じ民民党だということ
田野倉も自分も青年大統領ネカッティに憧れて権力の道を歩んだということ
この皮肉な伏線が 今我々に同じ決断を強いているということなのか?

一方、同時にウッチャリ田野倉も アンターラス大和に原子爆弾を落とした大統領の顔を
思い出そうとしていた。しかし その特徴のない顔は 不気味に誰の顔でも有りえて
異星人の言うルツィファーに魂を売り渡したという実証例のようだと気味が悪くなっていた。
その薄気味悪い思考を打ち消すために 
宇宙フリーエネルギー装置によって 化石燃料と原子力で富と支配を貪欲する者たちとの
対決を選んでしまったネカッティ大統領の就任演説を思い起こしていた。
 
一人シープマンは痛み止め薬の副作用である眠気に揺られながら
異星人が口にするルツィファーという言葉が耳から入り込む度に
ウィリアム・ブレイクの描いた天使ルツィファー像が彼の視界で微笑んでいた。
プロメテウスとは違うんだってさ・・・・彼は異星人に聞こえないように
そうブレイクの天使に囁いていた。メフィストフェレスが
ファウストに救済を与え、その躯(むくろ)を運び去る天使たちに 
思わず微笑む姿にそれは 酷似していた。

※昨夜 この稿を書き進めながらテレビから流れる痛ましい事件の最高裁判決報道を観ていた。
被害者のご遺族が 「全ての人が敗者です」と仰った。
彼が戦ってきた絶望に 誰が光をもたらしうるのだろう。
そう思うと私の書く手が止まった。
そして一週間書き続けてきたこの思い付きの短篇小説を上記の如くで締めくくるのも 
いいのかもしれないと 一晩躊躇していた。
しかし思い描いていたラストシーンとは 異なる!
今も 私は以下の実際に在った父と息子の会話を繰り返し我が心象風景のように想起し
結論をだそうとしている。


 オーギュスト・ルノワールに 息子のジャンがこう言った。
「ねぇお父さん あなたはどうしてそんな砂糖菓子のような甘ったるい絵ばかり描くのさ」
父親は いい齢をしてまだ正業に就いていない倅に 
「なぁ倅よ この世に棲み暮らす人々は 皆ほとんど 辛い日々をなんとか生きているのだよ
 せめて 私の絵を観る時ぐらい その辛さを一瞬でも忘れ この世界に存在することの
 辛さを少しでも和らげられたら わしゃあ それだけを願って描いているのさ」
 ちなみにその倅・ジャンは 映画監督のジャン・ルノワールである。


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栗庵流人・新帳~その96 [栗庵]

3人の各国首脳と1人の異星人が 平和を堪能していた。
THE PEACE!まさしく これぞ平和!
人類の文明が そのザ・ピースを手に入れるか
それとも全くそれを失ってしまうか
その岐路の最前線に彼らは立たされていた。

オ・ピュロン大統領が少し上機嫌だったのは
やはり煙草はストレス解消に最強の味方である事実と
神の子による庇護を異星人が遠回しに示唆されたからが
「ところで さっき ピラミッド建設するときに
 人間をこき使ったと云っていたけれど
 なんで君たちはピラミッドを建設したり、建設させたりしたんだい?」
という質問を唐突に異星人グレイ・スキンに投げかけた。
打ち解けたパーティの何気ない立ち話が 突然その場を凍りつかせたり
陰謀の瓦解へ繋がるドミノ倒しの最初のワンピースを倒すことにもなる。

「ピラミッド・・・あぁ そないな事 ゆーたかいや?
 ピラミッドは人類に労働の意味、労働の歓びを教えるためや。
 ま 勿論 わしらの着陸目印いう目的もあるんやけど
 それと人類の科学への目覚めを促すというこっちゃ」
「古代のニューデイル政策という説も 結構いい線いってましたね」
そうご愛想を入れたのは 東洋人の総理大臣・田野倉だった。
オ・ピュロン大統領も 相槌を打った。
「へぇ~ 貴殿たちは 異星人の目的が黄金だとご存じないらしい」
急所を羊に噛まれた内股男が 局所麻酔が切れてズキズキした痛みに
少し苛立ちを覚えながら 久しぶりの煙草をフィルターぎりぎりまで
吸い込みながら ワンピースを倒した。
グレイ・スキンは ドミノが次々と慣性の法則に従う様子を
察知していた。しかし それはそれで 陰謀が瓦解しようと
今更 この地球と黄金の引き換えに人類が自分たちを排斥する暴力に
訴える経路を搦め手で封じる用意にスイッチを入れるだけだと
腹を括るのも素早かった。現代の科学と建築の最先端技術を
総動員しても今の人類がピラミッドを忠実に再現する事は
未だできないことを思い知らせる銀色の小さな球が 人類の明るい未来と
同時に人類の思い上がりを思い知らせる機会を同時に賦与することが
2次元存在である彼らの役目であることは 彼らの良心に反することではないのだから。

「黄金・・・人類にとっては 価値代替え、要するに権利と権力の源だわな。
 そして暴力を正当化しうる数少ない物質の一つやな。
 シープマンはんに ゆうとくけど 我々はあんさんやあんさんが
 忠誠を誓うイルミナティの面々のような 権利や権力を奮う
 優越感という欲情・発情的満足を求めているわけやないことだけは
 予めゆうとくは。 黄金は 太陽活動の源なんや。
 太陽が 最も この系をノーマルな状態に保たせる活動をするために
 黄金が必要なだけや。自分だけがええ暮らしをしたり 自分だけが
 欲するがままに生き暮らし振る舞い 美女を飾る装飾品として
 黄金を使用するケッタイナ欲情発作と同一にされては 迷惑や」
異星人の優位な立場からの物言いに注意深い謙虚さや
狡猾な交渉術が内在していることをシープマン以外の国家首脳2人は気付いた。
和やかなパーティの立ち話から緊張感に満ちた綱渡りの会談への復帰を
覚悟させた。

「ん・・・いかん。痛み止めを服むないとだめだ」シープマンは
別の緊張感を緩和すべく よろよろと自分の車椅子に戻った。
楕円形のテーブルでは 人類と太陽系のThe Peace!に向けての話し合いが
始ろうとしていた。


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栗庵流人・新帳~その95 [栗庵]


「世界中の証券取引は 誰かさんに操作されていても おかしない。
 高利の銀行ローンや不正な麻薬取引でマネーは 誰かさんの
 手元にいつでも潤沢。更にそのマネーで諸国の政府を買収し
 国を破産に追い込み 天然資源やら金目のモンをあらかた
 買いたたく。何十億人の暮らしを最低限に抑えて
 戦争や内戦、紛争の火種をたやさず テロリストにも
 平等に武器を売りさばいて 絶望と憎悪だけを蔓延らす。
 そんな誰かさんらぁとのお仲間が 首相になると
 どんなおとなしい羊でも 名前に自分らの呼称を持つのが
 余程 許しがたかったんやろな」
グレイ・スキンは 異星人のはずなのに 人間よりも人間社会を
見透かしていた。田野倉総理は 穿った見方だと イルミナティに対して
キリスト教徒でない分 悪い冗談と退けるのが スマートだと信じている。
しかし 多くのキリスト教によって精神的背景が社会における基調になっている
シープマンやオ・ピュロンには 表面で イルミナティなど存在しないと
装っていても それがノーマルでスマートな振る舞いだとは内心思えない。
ある意味、それが 極東の島国、アンターラス大和にとって幸いしてきたことも
多々あるし それが故に碌でもないジョーカーを引かされてもいたのだ。
一方、オ・ピュロン大統領は ネカッティ大統領の身に起こった不幸から
異星人からの心強い防御を保証されなかったことに 期待外れをしていた。
「ナザレのイエスが再臨して イルミナティの本部をレーザー光線銃で
 殲滅してくれるんやないか・・・・と オ・ピュロンはん思うてた?
 ほなら さぞかし ガッカリしてまっか?」
宇宙のフリーエネルギー装置を大判振る舞いすることを担保しながら
自分の命の保証はしてくれない灰色の肌の異星人が そう云えば
「あぁ…ガッカリだね」そう正直に応え コツコツと 人差し指でテーブルを叩き
「でも どーせ人間は生まれたからには必ず死ぬ。そして私は他国の市民に
 あんな甚大な被害と生命を奪い取る事態を引き起こす地下核実験を
 そんなリスクも懸念せず許可した間抜けさがある。 そう間抜けだから
 私は あいつらに命を狙われるわけだ。ネカッティもおそらく相当間抜けだったんだろ?」
片方の手で頬杖をつき 苛立たしさを顕わにしながらも 決して陰気ではなく
寧ろ陽気に片方の手の指は 彼の頭の中で鳴っているハービー・ハンコックの『Watermeoln Man』の和音を鍵盤に叩きつけている素振りをしていた。
「ところで シープマン閣下、貴殿のタマへの甚大なる損害には心より同情致しますが ご自慢のあっちの方は 幸いご無事であられましょうな」
とヤケクソ気味の悪いジョークまで口にした。南半球の島国から来た男は
褐色のジャンキー野郎と言い返す代わりに 一度 オ・ピュロンを睨みつけるなり
「ナザレのイエスの再臨が イルミナティの本部を急襲するというのは ウソなんだな」
と灰色の男、青いテラテラ光るジャケットに黄色のシャツを着た異星人にそう言った。
「ナザレのイエスはんはいらっしゃるやろな。ただスターウォーズばりの
 闘いを指揮したりはせえへんやろうし わてらもな そないな武器をもうつかわへんねん。
 ただな ナザレのイエスは あんたらには見えるやろう。生身をまとってな。
 そしてひとり一人に ヨハネの黙示録を脳みそ内で現実として体験させるやろ。
 自分がした残虐さを自分の記憶から棄て去ったつもりでも 
 自分の残虐さに復讐されるだけのこっちゃがな。
 せやから ゆうたやろ 急所をかまれたんは 序曲やて」
シープマンの脳裏にラグビーの試合中、ラックに捲きこまれた際に敵方の選手の股間に
噛みついた自分の悪行がフラッシュバックしていた。審判に反則をとられた事は一度もなかったが
その罪科をチームメイトになすりつけ 敵方から袋叩きに遭う難から逃れた 自分の醜さが彼の網膜にベッタリと張り付いていた。目を瞬きするだけで  その時の自分の姿とまみえた。

「自分のした残虐さに復讐される」 ウッチャリ田野倉総理は異星人の箴言を繰り返した。
悪気はなかった。しかし彼もその言葉によって裁かれないかどうかは分っていないだけだ。
彼の左程多くない政治資金にも イルミナティのマネーが幾らでも紛れ込んでいる
可能性は大きいし オ・ピュロン大統領は ため息まじりにあれやこれやを
数え上げてさえいる。だからバクリカ連邦大統領は 
決してその異星人の箴言など繰り返したりしなかったのだ。ただ 彼は閃いたのだった。
「わかったぞ! ナザレのイエスは 現れるんだ!ひとり一人に!」
あれほどナイーヴになっていた大統領が グレイ・スキンに詰めよって 笑い出した。
田野倉総理には ナザレのイエスをイメージすることができなかった。
『ベン・ハー』という映画のラストシーンを思い起こしても駄目だった。
闘技場で馬車に乗って繰り広げられる激しい攻防戦シーンが辛うじて
田野倉総理の記憶の海に浮かぶだけだった。

 グレイ・スキンは 田野倉総理にこう言った。
「あんさんの上着の内ポケットに入っている煙草を一本ほしいんやけど」
田野倉は 煙草など持ってきていないと応えようとしたが
念のため内ポケットを手探りしてみた。すると冷たい金属性の薄い函に指が当たった。
それを取り出すと 濃い藍色に金色の鳩がオリーブの枝を加えた図柄の入った煙草が彼の掌に乗っていた。それは異星人のマジックでもなんでもなかった。彼の細君が 海外に出掛けるとも知らずにバレンタインデーのチョコレート代わりに忍び込ませたのだった。せめてバレンタインデーぐらい好きな煙草をという大和撫子らしい心づもりだ。そしてその煙草は総理大臣が普段吸っている銘柄の2倍を超える値段で売られていた。煙草税を上げるのには渋った総理であったが 消費税を上げるのには躊躇うことは無い。そんな皮肉は少しも込められていなかった。
グレイ・スキンとオ・ピュロンが 揃ってそのシガレットのデザインを褒めた。
平べったいケースを開けると銀と青の中シートがあり それを剥すと
上品な煙草の香りが 立ち上り 異星人も 禁煙家の大統領も笑顔になった。
「The Peace!」それがその煙草の銘柄名だった。
異星人と禁煙家のバクリカ連邦大統領が そのネーミングを 口を揃えて
叫び合った。シープマンを除く者たちが 部屋の片隅で煙草を吸いだすと
「なんで私はのけ者扱いされるんだ」 車椅子の首相は立ち上がり
そうブツブツ言いながら少し内股で歩いてきた。


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