SSブログ

『スサノヲ展』観賞記 [小説]

根津美術館に巡回すると勘違いしていて
ギリギリセーフで松濤美術館へ。

瀟洒な街並みに在る美術館は 空中回廊の下に
中庭の噴水があり 此処を訪れるだけでも
異空間に誘われる気がする。
そして展示は まさしく異界 いや異空間。

いきなり松江市の八重垣神社の壁画が現れる。
巨勢金岡という9世紀頃の偉大なる画家による
スサノヲ様と八岐大蛇伝説のヒロイン、イナダ姫の
肖像の前で立ち尽くす。まさか本当の壁画ではないけれど
私の脳裏には 
中矢伸一氏の『神々が明かす日本古代史の秘密』が蘇る。
日月神示にも関わる大切なことがこの書物には書かれている。
そして縄文土器が並ぶと 王仁三郎師の写真と
出口なほ師の御筆先が 目を奪う。「ひのでのかみとおとひめさまが」
という内容だが 展示カタログが完売していて確かめられなかった。
振り返ると 「美よしの」という銘の美しい茶器が在った。
王仁三郎師作で
あの厳しい二度目の大本弾圧から解放された直後の人が
その手で拵えたとは思えない程 碧の茶碗は美しく妖しく
見事な出来栄えだった。群青の星空が茶碗の内に描かれ
この茶碗でお点前を受けた者は 宇宙の一服をもてなされる趣向と観た。
力強さは色使いだけで こしらえは 繊細で可憐なのが素敵だった。

平田篤胤のコーナーは 陽気でなく、
妖気の方が漂っていて 半身にならざるを得ない。

 月讀尊も素戔嗚様って・・・兄弟でしょ?
まぁ それはいろいろ神道に詳しい方々にお任せしよう。
それより 天河弁財天様も 不忍池の大弁財功徳天様も
やはり 宇賀様又は宇迦様なのだねぇと 
なぁんだ そうだったのか は個人的な感想。

南方熊楠が小学生くらいの時に『和漢三才図絵』を
書き写した原本。小さな紙にペンとインクで仔細洩らさず
写し取ってみせるという気魄が満ちている。
若い時の顔つきは 同年の漱石や秋山真之同様
東大予備門に揃いもそろった感じだが
西洋人的な目鼻立ちをしている。
クリスチャンイスラエルが 日本を訪れて
日ユ同祖論に掻きたてられたのは 顔立ちだという説もある。
にしても熊楠とアルチュール・ランボーは印象が重なる。
それよりも 熊楠の粘菌などの採取録は 貴重な見物でした。

金井南龍と岡本天明の油彩画は 各一点。
岡本天明は本職の画家だったが 南龍の
直観任せの筆使いに押されたようなナイーヴさだったのが
意外な感じがした。反面、南龍の構図は
同じ岡本でも岡本太郎に近く 大胆そうで
結構 計算している感じがした。原色遣いだから
そう感じただけかもしれないけれど。

田中正造や熊楠が なぜ スサノヲ展なのかは
エコロジーというよりも 地球への愛ということだろうか?
いや 寧ろ
【いのち、いかり、いのり】 この展覧会ポスターの
コピーが 答えであると言えよう。

こんな見応えのある展覧会を 建物自体が
美術品とも言える松濤美術館で
わずか五百円で堪能させて戴く。

サロンデミュゼのソファで
ボルヘスの『バベルの図書館』でも読んでいたいものだと
思うのでありました。 
志賀直哉終焉の街は
静かな佇まいに豪奢な夕陽をたっぷり湛えて輝いていた。



nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:blog

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。